山崎弁栄記念館は
令和5年1月23日より当面の間休館いたします。
混迷が深まるとき、真実を告げる者は、かえって忘却の国に閉ざされることがあります。その声は時代をつかさどる為政者に覚醒を迫る痛烈な言葉を投げかけるからです。しかし、世界がその存在を必要としているならば、人間は衆知を募ってその人物を思い出さなくてはなりません。
修道、教学の研究、発展においては近代浄土宗を代表する偉僧。法然によって開かれた真実の伝統と今を再びつなぎとめるため、宗門の異端者として生きることをいとわなかった改革者。また、市井に生きることから決して遊離しない透徹した布教者。仏教に立脚することで、かえって他の宗教、哲学に開かれていった霊性の巨人。こう書いてみても、この人物の断片を伝えることしかできません。
山崎弁栄は多くの書簡を残しています。そこに、私たちは、この人物の声を聞くことが出来ます。また、各地で行った講話論述は、没後その高弟田中木叉によって編纂され十巻を超える書物として残っています。
また、彼は多くの書と画を残しました。それは余技ではなく講話や書簡と同じく、彼の教導の中核をなす営みでした。
宗教者の「コトバ」は、―それは衷心の悲願でもありますが―必ずしも言語で表現されるとは限りません。彼の書画は、書籍は記録できない、彼が残した「コトバ」です。
山崎弁栄記念館は、2013年8月に開館しました。本年は、山崎弁栄(1959 ~1920)が没して93年が過ぎます。彼が開いた光明主義に帰依する人々は別に、彼を知る人は現代では決して多くはありません。今、彼の業績は、彼の「遺言」となっています。遺言は読まれ、それが実行されたときに、その役割を果たしたことになります。山崎弁栄の「コトバ」は、さらに多くの人に読み説かれるのを待っています。